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Vol. 203 Hybrid Spring/Summer fabrics

まだまだ寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
例年以上に寒さが身に沁みますね。
今年は、2月3日に節分、2月4日に立春を迎えました。
よくテレビの天気予報などで、「今日は二十四節気の始まりの立春、それなのに寒い」みたいな表現をされますが、本来、立春を境に少しずつ春の気配を感じますよ、と言うことなので、本来、立春の日が一年で一番寒い、と言うことになりますよね。
でも、今年は逆に立春からどんどん寒くなり(幸いこの数日は温かくなりましたが)、身に着いた季節のリズムから外れているのが、「身に染みる寒さ」なのかもしれません。
ただ、ひょっとしたら、単純に「歳を取った」だけの話かもしれませんが(笑)

ところで、今年も、2023年春夏物の生地見本がほぼ八割がた揃いました。
今シーズンは、日本を含めて世界的に経済活動の再開、といったムードもあり、例年以上に目新しい素材が増えているような気がします。
その中でも気になるのが、今まで10年以上、ウール/シルク/リネンなどの三者混が主流だった、特にジャケット生地において、ウール/シルクやウール/リネンのシンプルな二者混が増えてきている点です。
おそらく、経済活動の活発化によって、より清涼感のある夏物の需要が増えるという見通しに立って、素材の持つ長所と短所を補完し合うシンプルな混紡や交撚が求められているかもしれません。
前述のように、ウールの相方としてシルクやリネンが多くみられますが、それぞれ、どのような物性、特性を持っているのでしょうか。
まず、シルクですが、比重が軽い、と言う点が大きなメリットです。
比重はウールとほぼ同様の1.3程度(コットンは1.5以上)ですので、夏物の重要なポイントである「軽量」という点でメリットがあります。
それでいて、糸の強力はウールの4倍以上あり、伸度(両端を引っ張った際に切れるまでの伸び率)はウール並みです。
従って、シルクをミックスすることにより、より隙間の開いた平織の生地を織ることが可能となり、結果的に通気性の良い、軽い生地が出来上がります。
さらに、保湿性が極めて高く(コットンの1.3倍)、30%の水分を含んでも湿っぽさがなく、さらさらとした風合いになり、すぐに乾くという特徴もあります。
ただ、耐熱温度が低く、日光などで変色をすることもあるため、ウールと混ぜることにより、そのデメリットを補うことができるのです。
一方、リネンですが、非常に強い素材である点が大きなメリットとなります。(強力はウールの7倍、コットンの2倍)
この特徴のおかげで、シルク以上に隙間の開いた生地を作ることができ、通気性と言う点においては他の追随を許しません。
また、コットンよりも高い吸水性を誇り、さらに、発散速度も速いため、常にさらさらとした風合いになります。
さらに、熱伝導率が高い点も大きな特徴です。(ウールやシルクの約1.5倍)
熱伝導率が高いとひんやりとした肌触りになる点も、夏の素材としては大きなポイントです。
ただ、伸度は非常に低く(ウールやシルクの10分の1以下)、伸びのなさが着心地にも影響するため、ウールと混ぜることにより、デメリットを補完しています。
夏物は概して平織が多いのですが、それは平織は綾織りに比べて経糸・緯糸の接着点が多く、隙間が開いていても充分な生地の強さを維持できるからです。
更にシルクやリネンを混ぜることにより、生地の強さを維持したまま、より夏物としての機能(軽量・通気性・さらさら感・ひんやり感など)を高めることができます。
昨今はGWを過ぎると急に夏らしくなります。
今年の初夏や盛夏に最適なジャケットやスーツはいかがでしょうか。

下の画像の生地見本はすべて当店にございますので、ぜひ肌触りをお確かめください。
(今年のトレンドのグリーン系を中心にご紹介します。)


Harrisons  “Indigo”  80% Wool  20% Linen  230g  (綾織)

 


Harrisons  “Isca”  55% Linen  45% Wool  230g  (平織)

 


Ermenegildo Zegna  ”traveller”  95% Wool  5% Silk  210g  (ホップサック)

 


Ermenegildo Zegna  ”Loop”  87% Wool  13% Silk  210/220g  (綾織)

 


Ermenegildo Zegna ”Bielmonte”  90% Wool  10% Silk  250g  (平織)

 


Dormeuil  “Rising Sun”  83% Wool  17% Linen  230/250g  (平織)

 


Dormeuil “Rising Sun”  55% Wool  45% Silk  230/250g  (平織)

 


Drago  60% Linen  40% Wool  260g  (綾織)

 


Vitale Barberis Canonico  78% Wool  22% Silk  260g  (平織)

 


Loropiana  ”Proposte Abiti”  85% Super 150’s wool  15% Silk  150g  (平織)

(おわり)

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