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Vol. 228 Man-made Fibre

4月に入りましたが、相変わらず三寒四温の気温差がかなり激しいですね。
当店ではオールシーズンの生地や盛夏物の生地の見本がすべて揃っていますので、スーツ、ジャケット、パンツ、なんなりとご相談ください。

今回は、非常に特殊な生地のご紹介です。
Combat Wool™と呼ばれるコーデュラナイロンとウールの混紡素材です。
コンバットウール!戦闘用のウール!


Cordura🄬 Combat Wool™ 40% Wool  25% Nylon  35% Polyester  260g

Cordura🄬(コーデュラ)はアメリカのInvista社の商標登録で、Combat Wool™もInvista社が独自の商標として使用しています。
多分、コーデュラのブランド名は耳にされたことがあると思いますが、主にアウトドア用のバックパックや軍服、作業着などに使用されており、とにかく摩耗に非常に強い素材です。
画像の生地はこのコーデュラとウールが混紡されており、ウールの肌触りのよさや保温性とコーデュラの耐摩耗性の両方の特性を持つハイブリッドな素材となっています。
混紡とは、原毛やトップ(原毛を引き揃えた状態の繊維束)の段階で2種類以上の素材を混ぜて一本の糸に紡績するものです。
このコンバットウールの耐摩耗性は通常のメリノウールの10倍以上と言われています。
また、さらにポリエステルも混紡することにより、防しわ性や速乾性の向上を実現しています。
ナチュラルストレッチ性も併せ持ったこの生地は、ウールに引けを取らない肌触りで、パンツはもちろんのこと、ヘビーユーズのジャケットやスーツにも最適な素材です。
綾織のオールシーズンと平織の春夏物がありますので、ぜひご利用ください。
(いずれも無地のみの展開です。)


(左)Cordura🄬 Combat Wool™ 40% Wool  25% Nylon  35% Polyester  210g  (平織)
(右)Cordura🄬 Combat Wool™ 40% Wool  25% Nylon  35% Polyester  260g  (綾織)

 

それでは、この機会に我々には比較的縁遠い化学繊維について簡単にご紹介したいと思います。

化学繊維とは、天然繊維(綿・絹・羊毛など)に対して、化学的なプロセスを経て作られた繊維の総称で大まかに「再生繊維」と「合成繊維」に分けられます。
再生繊維(半合成繊維を含む)とは天然素材(植物繊維=セルロースなど)を化学処理して作る繊維です。
例えば、レーヨンは木材パルプ、キュプラはコットンリンター(綿の種の周りの細かい繊維)を原料として、化学処理をして作られます。
レーヨンはかつて「人造絹糸(人絹)」と呼ばれたように、まさにシルクの代替品として人工的に作られた繊維です。
ヨーロッパではかつて同じ重量の金と交換されるぐらい高価なシルクは19世紀に需要が高まる一方で生産量が限られていたため、安価で大量生産ができる代替品が求められてきました。
スイス、フランスなどで開発が進み、ついに1905年に英国にてレーヨンの工業生産が始まりました。
そんな歴史があるため、今でもヨーロッパではこれらの再生繊維は化学繊維ではなく天然繊維として認識されることもあります。

一方、合成繊維は石油などを原料とし、化学合成によって作られた素材です。
樹脂を溶かしてシャワーのようなきわめて細いノズルから押し出すことにより、コットンやウールのような細い繊維になります。
合成繊維には、ポリエステル(PET)、ナイロン(PA)、アクリル(PAN)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)などがあります。
先ほどのレーヨンのように、天然素材の代替品として、安価で安定的な供給を目的に作られたものが多く、ポリエステルはコットン、ナイロンはシルク、アクリルはウール、ポリウレタンは天然ゴムの代替品として作られた歴史があります。
ポリエステルの略称はPETと言うがごとく、まさにペットボトルと同じ素材ということになります。
日本においてはテトロンという商標で有名ですが、共同開発をした帝人(旧帝国人絹)と東レ(旧東洋レーヨン)の頭文字の「テ」と「ト」を使ったという都市伝説があります。
同様に、ナイロン(NYLON)もアメリカのデュポン社がアメリカと英国で特許を取得したため、ニューヨークのNYとロンドンのLONを組み合わせたとのうわさがあります。
(両方とも、ここだけの話として、人に言わない方が良いかもしれません(笑))

また、ユニクロのヒートテックなども、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ポリウレタンの混紡素材でレーヨンの持つ吸湿発熱性やアクリルの保温性、ポリエステルの速乾性、ポリウレタンの伸縮性を発揮しており、もともと天然素材であるウールの持つ特性を合成繊維で再現したと言えます。
したがって、我々としては、天然繊維の性能の素晴らしさを再認識するとともに、安価で耐久性のある化学繊維をうまく利用できればと思います。

昨今はSDG’sの観点から、生分解に数百年以上かかると言われる合成繊維が敬遠される傾向にあります。
但し、世界中の消費者が持っている衣服を3か月間長く着用するだけで、二酸化炭素の排出量、廃棄物や水の使用量を1割削減できるともいわれており、上述のCombat Wool™のような生分解に時間がかかるけど「へこたれない」素材で長く着用することも、大きな「サスティナブル」な要素かもしれません。

(おわり)

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