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12.12021
Vol. 188 Textile Machinery
すっかり秋も深まってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
幸いにもコロナも比較的収まっていますが、新たな変異株も出現したので、これから年末年始が心配ですね。
9月のコロナでご紹介した、ロロ・ピアーナのCLIMA SYSTEMのジャケットが仕立て上がってまいりました。
Loropiana “Clima System” 100% Wool 405g
Clima Systemは、グラフェンというの炭素原子のメンブレーン(皮膜)を生地の裏側に貼り合わせた服地です。
グラフェンは防水性と透湿性を併せ持ち、しかも熱伝導率が高く、従来の皮膜に比べ8倍のスピードで衣服内に熱を均一に伝えることができ、効率的に体温を保つことができるそうです。
ようやく肌寒くなってきたので、実力を試してみたいと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ところで、先日、念願の「トヨタ産業技術記念館」に行ってまいりました。>>
名古屋駅にほど近く、元織機製造工場の赤レンガの産業遺産の建物をそのまま利用し、広大な博物館となっています。
トヨタはもちろん、今や世界一の自動車メーカーですが、ルーツは豊田佐吉の自動織機、その自動織機の第一号機を含め、糸をつむいだり、布を織ったりする「道具」から、それぞれの初期から最新の「機械」まですべてが展示されています。
しかも、多くのものが実演を含め「稼働」しており、実際の動きを見ることができます。
豊田式木製人力織機の実演
下の映像は豊田佐吉の初期の木製の力織機(人力ではなく、蒸気や電力を動力とする織機)です。
このように、古代から現在までの機織りを見ていくと、たて糸(経糸)に対して、いかによこ糸(緯糸)を素早く、スムーズに打ち込んでいくかの追求であったことがよくわかります。
よこ糸が切れた際に自動で機械がストップする装置、よこ糸の杼(ひ=シャトル)の糸がなくなった場合に新しい杼に自動的に交換する装置など、豊田佐吉の様々な発明により、人手をかけずに連続運転が可能となりました。
(シャトルは緯糸を通すために、往復運動を繰り返します。これが、シャトルバス、スペースシャトル、バドミントンのシャトルコックなどの語源になっています。)
G型無停止杼換式豊田自動織機(杼=シャトルを自動交換できるG型織機の記念すべき第1号機)
そして、杼(シャトル)は非常に重く、杼を使う以上、スピード化には限界がありましたが、その後、杼を使わない織機、いわゆる無杼織機が開発され、劇的にスピード化が進みました。
さらに、現在では、よこ糸を水流で飛ばすウォータージェットや空気の気流で飛ばすエアージェットなどの織機が開発され、当初のシャトル織機の何十倍の速度で生地が織れるようになりました。
下の映像がウォータージェット織機とエアージェット織機の動きです。
よこ糸を通した後に、よこ糸を平行に整えるために前後に運動する筬(おさ)打ちのスピードを上の木製の力織機と比べていただくと、速度は一目瞭然ですね。
また、こちらは環状織機という、1906年に豊田佐吉が発明した回転円運動により幅広の生地が織れる独創的な織機です。
機械の右下にあるような、湾曲した杼(シャトル)が、往復運動ではなく、回転運動をしてよこ糸を打ち込んでいきます。
リング精紡機(左)とミュール精紡機(右)
当日、実演の際に頂いた、綿の種(左)とコットンのスライバー(右)
実は、この記念館には、更に広大な二層にわたる「自動車館」があるのですが、残念ながら繊維機械館だけでお腹がいっぱいになり、結局、自動車は一台も見ないままあとにしました(笑)
私は、まだシャトル織機が全盛のころに、英国のヨークシャーの毛織物の産地ハダースフィールドに滞在していたこともあり、また、国内でも葛利毛織などの工場で織機や紡績機を見る機会が頻繁にあったのですが、このように説明を聞きながらじっくり機械を見ることにより、改めて原理を理解することができ、そして楽しませてもらいました。
そして、糸や布を通して、古代からの技術の進歩を目の当たりにし、ますます糸や生地に対する興味が深まってきました。
ぜひ皆さんも、名古屋に行かれる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。
こちらのHPのバーチャルガイドツアーでも十分お楽しみいただけます。>>
ちなみに、写真撮影もOKです。
「わが街とくさんネット」のひょうご・神戸オンライン物産展もいよいよあと一か月、12月29日までとなりました。
当店の神戸タータンのネクタイなども販売していますので、ぜひご覧ください。>>