Vol. 192　Wool/Linen Jacketings and Suitings

まさに桜の満開の季節がやってきました。
一気に春めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
それにしても今年の冬は寒かったですね。

当店におきましても、春夏物の生地見本がすべて出そろいました。
当初、ヨーロッパのコロナの影響で、この春夏物の生地見本の出足が悪いような気配もありましたが、ここにきて、ほぼ例年並みのサンプルがそろいました。
昨今の円安の傾向から、生地の価格は上がっていますが、今シーズンはほんの少しの上昇、むしろ、次の秋冬に大きな影響が出るかもしれません。

春夏物のサンプルを俯瞰して気が付くのは、ここのところ、ウール/リネンの混紡のジャケット生地、スーツ生地が増えてきたことです。
先々月にも、この20年近く、特にジャケット生地は三者混やファンシーヤーン使いが全盛で、ごく普通のウールのジャケット生地が珍しくなった、ということをお伝えしましたが、同じくシンプルなウール/リネンの生地もそれに押されて長らく姿を消していました。
今シーズンは、春夏物の素材として三者混が定番化してきたこと、ファンシーヤーンなどの立体感のある生地のはやりが一段落したことで、一気に英国生地、イタリア生地を問わず、ウール/リネン生地が増えてきたような気がします。
このウール/リネン生地は、大きく二つに分かれ、夏を意識したスーツにも使える薄手のものと、ざっくりとしたサマーツイード的なものがあります。
いずれにせよ、前述の三者混に比べるとより「夏」のイメージが強くなります。
麻*っぽい張りのある風合いでありながらしわが寄りにくく、リネン特有の光沢感が清涼感を醸し出しています。
リネン100％に抵抗感のある方も、これなら無理なくご着用が可能だと思います。
まさに、ウールとリネンのいいとこどりのハイブリッドな素材と言えます。

*「麻」
日本で一般的に「麻」と呼ばれるものには、リネン（亜麻＝あま）、ラミー（苧麻＝ちょま）、ジュート（黄麻＝こうま）、ヘンプ（大麻＝たいま）、ケナフ（洋麻＝ようま）などがあります。
日本語名には「麻」がついていますが、実はすべて違う植物です。栽培される地域もまったく異なります。
（同じ「獣毛」と言っても、ウール、キャメル、カシミアなど違う動物から採れる、というのと似ていますね。）
これらは「靭皮繊維」と呼ばれ、植物の茎を利用していることがただ一つの共通点です。
ちなみに、これまたややこしい話ですが、日本の品質表示法では、リネンとラミーのみが「麻」という表示が認められ、それ以外は「指定外繊維」と表示されます。

それでは、今年展開している主なウール/リネンの生地をご覧ください。

Abraham Moon “Dean” 50% Wool 50% Linen 280g