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No. 245 Trouserings

立秋を過ぎて、少し暑さも和らいできました。
というか、身体が暑さに慣れてきた、ということかもしれません。

まず、業務連絡ですが、店長は、9月10日(木)から15日(火)まで、勤務する大学の公務の海外出張のため不在となります。(カレンダーはこちらをご参照ください。>>
通常通り店は営業しておりますが、仮縫等につきましてはご不便をおかけする場合があります。
あしからずご了承ください。

ところで、当店では秋冬物のサンプルがほぼ出揃いました。
今回は、冬のパンツ素材をご紹介したいと思います。

冬はさまざまな素材を楽しめる季節です。
パンツにおいても、ドレッシーなフランネルやサキソニーをはじめ、少しカジュアル寄りの素材まで幅広く選ぶことができます。
その筆頭はコーデュロイやモールスキンですが、これら以外の素材もご紹介したいと思います。

その前に、冬素材の話をするうえで、少しパンツの歴史を振り返ってみたいと思います。
すこし歴史をひもといてみますと、当時、ファッションの中心地であったフランスではルイ王朝の肖像画でもおなじみのアビ・アラ・フランセーズと言われる、コート(長いジャケット)とベストとひざ丈のパンツのスリーピースが一般的でした。(ひざ丈のパンツとは、今でいうニッカボッカの長さです。)
ジャケットという呼称は、19世紀の後半に現在の上着丈になったときに呼ばれるようになったので、それまでは「コート」だったのです。
この上着は、ジュストコール、フラック、ルダンゴト、アビなど、時代やスタイルによって呼び方は変わりましたが、こうした服装では、ひざ丈のパンツが基本で、「キュロット」と呼ばれていました。
これはまさに貴族の象徴と言える服装であったため、1789年のフランス革命において、貴族政治を打ち破った市民は「サン・キュロット」(キュロットをはかない人)と呼ばれ、裾までの長いパンツ(パンタロン)をはき、当時の革命家の象徴となりました。
それ以降、フランスではひざ丈のキュロットは次第に姿を消していきました。

一方、英国においても、貴族は同様の服装で、ひざ丈のパンツは「ブリーチズ」と呼ばれていました。
かの有名なボー・ブランメルはフランス革命の直前の1778年生まれですが、英国ではその後も貴族社会が存続したため、ブランメルの時代には長いパンツ(トラウザーズ)と、貴族の象徴であったひざ丈のブリーチズが併存していました。
ブランメル自身も両方を着用していたようです。
もっともトラウザーズもピチピチのタイツのようなもので、長靴の中に入れていたようです。
当時の英国の男性貴族たちにとって、ハンティングに代表される乗馬は欠かせない嗜みでした。
また、ヨーロッパでは19世紀の初頭まで、戦争における騎兵が「戦場の花形」と言われたこともあり、そうした用途に耐える丈夫なブリ―チズ用の生地が求められ、英国においては様々な丈夫なパンツ素材が発達していったのです。

それでは秋冬の主なパンツ素材をご紹介します。(もちろん、それぞれ、ジャケットやコートにも使えます。)

 

◆ Bedford Cord(ベッドフォードコード)


William Bliss  ”Cotswold Country Tweed”  100% Cotton  530g


この素材は、日本においてはあまり紹介されてこなかったのですが、コーデュロイやモールスキンに続く、カジュアル寄りのコットン生地として今後注目されると思います。
コーデュロイと同様、縦の畝が特徴ですが、起毛されていないため、秋から春にかけて長い期間の着用が可能です。
もともと、15世紀にベッドフォード公爵が自らの軍隊のユニフォームに採用したのが始まりで、それ以降、前述のブリ―チズやユニフォームに使われています。

 

◆ Whipcord(ウィップコード)

W.Bill  “Whipcords & Cavalty Twills”  100% Wool  380g


はっきりとした畝が特徴の2/1綾の綾織りです。経糸、緯糸とも高密度に織られているため、綾が急角度になっているのが特徴です。
経糸に霜降りや杢糸を使っているものが多く、深みのある色合いになります。
高密度の織物ですので、風を通しにくく暖かく、耐久性がありますが、2/1綾のため軽量でパンツには最適です。
日本ではカルゼと呼ばれています。

 

◆ Covert Cloth(カバートクロス)

 
W.Bill  “Whipcords & Cavalty Twills”  100% Wool  380g

Whipcordの一種で、本来、カバートコート用の生地です。
Whipcordと同様、経糸に霜降りや杢糸を使っていることが多いのですが、一般的には経糸・緯糸ともに梳毛糸が使われており、毛羽立ちの少ない、いわゆるサージ仕上げとなっています。
そのため、長い季節のご着用が可能です。
コートだけでなく、パンツにもお勧めです。
杢糸とは、2本の異なった色の糸を撚り合わせた双糸です。
上の画像の場合、経糸が明るめの茶色とベージュの組み合わせになり、濃い茶色は緯糸です。
(上の画像以外で取扱いのあるミル Abraham Moon, Standeven, Harrisons, Vitale Barberis Canonico)

 

◆ Cavalry Twill(キャバルリーツイル)


W.Bill  “Whipcords & Cavalry Twills”  100% Wool  600g


ウィップコード同様、急角度の綾織りですが、このキャバルリーツイルは、二重綾と呼ばれる太い畝が特徴です。
上のウィップコードやカバートクロスは畝の部分と谷の部分がほぼ同じ巾ですが、この生地は畝が圧倒的に広くなっています。
Cavalryとは騎兵のことで、第1次世界大戦の際に英国陸軍で乗馬用のブリーチズにこの生地を採用したのが始まりと言われています。
高度な耐久性と適度な伸縮性が乗馬用に最適です。
(上の画像以外で取扱いのあるミル William Bliss)

 

◆ Moleskin(モールスキン)

W.Bill  “Corduroy & Moleskin”  97% Cotton  3% Polyurethane  445/465g

その名のとおり「モグラの皮膚」を連想させる、厚手のコットン素材です。
短めの起毛の表面は非常になめらかで、英国では冬のカジュアルパンツ素材としては、コーデュロイ以上に人気があります。
もともと、英国のスタフォードシャーの陶器職人の窯での作業の際の作業服として使われていたそうで、断熱効果は折り紙付きです。

(上の画像以外で取扱いのあるミル Brisbane Moss)

 

◆ Corduroy(コーデュロイ)

      
W.Bill  “Corduroy & Moleskin”  100% Cotton  440~510g

コーデュロイは、縦方向に走る畝(うね)が特徴のコットン生地です。英国ではールスキン同様、古くからカントリーウェアやパンツ素材としても親しまれており、保温性と耐久性に優れています。
もとは17世紀、18世紀において、宮廷の使用人のユニフォーム素材として開発され、「Cord du roi」(王様の畝)が語源です。
1インチ当たりの畝の数をWaleといい、上の画像でしたら、順番に12Wale、8Wale、5Waleぐらいになります。
畝の太さによって印象が大きく変わるのも魅力で、太畝はカジュアルに、細畝はジャケットやスーツにも使える上品な表情になります。
素材もコットン100%以外に、伸縮性の高いポリウレタン混、やわらかい肌触りと温かさが特徴のカシミア混などもあり、色のバリエーションも豊富です。
さらに、毛足の方向(順目、逆目)によっても色の深みが変わるので、色選びの際にお試しください。

(上の画像以外で取扱いのあるミル Brisbane Moss、Bateman Ogden、Carnet,  Duca Visconti di Modrone)

(おわり)

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