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Vol. 234 Double-breasted Jacket

すこし凌ぎやすくなったと思ったら、またまた30度越え、秋も徐々にやってくる感じですね。

当店では2025年の秋冬物の服地はすべて出そろいました。
例年よりコート生地も充実しており、先月ご紹介した300g前後のスーツ生地も色々揃っていますので、ぜひご覧ください。

ところで、今シーズンはダブルブレストのスーツやジャケットのご注文が非常に多くなっています。
ダブルブレストは冬場には温かみと重厚感があって使いやすいアイテムです。
後述しますが、基本的にカジュアル度の高い服ですので、コーデュロイ、モールスキン、デニムなどのコットンパンツにもコーディネートができます。

皆さんご存知のように、ダブルブレストの出自は海軍です。
洋上での風向きに応じて、上前(前身の左側)と下前(前身の右側)の打ち合わせを逆にしても着用が可能なのです。

英国海軍の制服(店内に現物があります。)

 


DB=Double-breasted
RN=Royal Navy (英国海軍)
Class Ⅰ =  式典・公式行事に着用が可能
Class Ⅲ =  日常業務・艦内勤務に着用が可能

 

 

 

 

 

風向きに応じて打合せを逆にもできるように、上前・下前ともボタン穴が開いている。

 

当店にもダブルブレストのサンプルがいろいろありますが、今回は、ネイビーのブレザーを紹介させていただきます。

Scabal “Classics” 100% Wool  370g  (ホップサック)
ちなみにメタルボタンはかつての「パン・アメリカン航空(パンナム)」のパイロットの制服のもの

 

特にホップサックのざっくりとした風合いのトップスの場合、ボトムスはボリューム感のあるコーデュロイ等のコットンパンツでも大丈夫です。
出自が軍服である以上、本来なら、すべてのボタンを留める必要がありますが、立ったり座ったりすることが多い場合は、一番下のボタンは外しておくと便利です。
また逆に2列目を外して、下だけ留めても、Vゾーンが若干拡がり、下衿が長くなり(いわゆる、ロングターン)面積が増えるので、また違った雰囲気になります。

 

このようにボタンの留め方で様々な雰囲気を楽しめるのも、ダブルジャケットの楽しみです。

ただ、メタルボタンを使ったブレザーの場合、一つ厄介な問題が発生します。
メタルボタンの場合、ボタンそのものに、所属する軍隊や連隊の紋章などを表現することが多く、通常の水牛ボタンのように穴を開けることができず、ボタンの裏に糸留め用の「脚」がついています。


脚そのものの高さが数ミリあるため、下前ではボタンを留めるとちょうど上前の生地の厚みが入り、程よい佇まいになります。
逆に上前のボタンは生地の重なりがないため、どうしてもボタンが「お辞儀」してしまいます。

 

上の画像は下前のボタンですが、上前が重ならない状態ではこのように下を向いてしまいます。
上前のボタンは重なりがないので、常にこのような状態となります。
そこで、このブレザーについては、上前のボタン位置に穴を開けて、ボタンの脚を生地に埋め込んでいます。

 

一番上のボタンはちょうど胸ポケットの位置なので、脚がポケットまで貫通し、裏側はクリップで留めています(笑)

 

このような加工をすることも可能ですし、現に、上の画像の英国海軍の制服も埋め込んであります。
たしか、旧ドイツ軍の軍服のボタンは上前用、下前用と脚の高さが違うものが用意されていたと思います。

ところで、英国のメンズファッションのガイドブック「A Well-Dressed Gentleman’s Pocket Guide」のパンツの解説の項目にこのように記述されています。

Faux Pas(フランス語で「無作法、エチケット違反」の意味、「RSVP」と同様、英語でもそのまま使用される。)
・Formal suits with turn-ups (フォーマルウェアに裾の折り返しのあるパンツ)
・Double-breasted suits without turn-ups (ダブルブレストの上衣と裾の折り返しのないパンツ)
・Casual ‘separates’ without turn-ups (カジュアルなジャケットと裾の折り返しのないのパンツ)

つまり、ダブルブレストのジャケットには裾の折り返しのないシングルのパンツはマナー違反であると。
軍服由来のダブルブレストのジャケットはシングルブレストに比べ、よりカジュアルとみなされ、フォーマル度の高いシングルのパンツは合わないということです。
本によっては、本来のマナーはその通りであるが昨今はそこまで気にしなくてよい、とも書かれていますが、いずれにせよ、シングルブレストの方がフォーマルであるという位置づけです。
日本の年配の方々は真逆の認識があり、面白いですね。

いずれにせよ、ダブルブレストのジャケットやスーツは、普段とは違った趣があり、なかなか良いものです。
ぜひお試しください。

 

店長の勤務します神戸松蔭大学人間科学部ファッション・ハウジングデザイン学科では、独立行政法人日本芸術文化振興会の助成事業「文化芸術活動基盤強化基金 クリエイター等支援事業」の採択を受けて、「IPプロデュースコース」を開設する運びとなりました。本コースにおきましては、コンテンツ分野におけるIP(知的財産)の開発・育成からグローバルな展開まで、ビジネス全体をプロデュースできる人材の育成をめざします。このたび、政府の進めるエンタメ・クリエイティブ産業戦略のアクションプランをふまえたうえで、産官学連携によるクリエイティブ教育の在り方とIPを活用した新たな価値創造について考察する記念シンポジウムを開催いたします。

ファッションをはじめ、コンテンツビジネスの分野においては、デザインやプランニングのみならず、現代社会でますます重要性を増すIPの活用力やプロデュース能力が求められています。本シンポジウムでは、行政の関係者、業界の第一線で活躍する専門家、教育関係者、学生、コンテンツビジネスをめざす高校生などが一同に会し、多様な視点から「IPプロデュース」の国内市場および海外における可能性や今後の社会的意義について議論を深めます。

オンラインでも同時開催いたしますので、ぜひご参加ください。

詳細、参加お申し込みは神戸松蔭大学のHPをご覧ください。>>

 

 

(おわり)

 

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