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Vol. 196 Authentic Home Spun from Iwate

誠に勝手ながら、8月1日(月)~5日(金)は夏季休暇とワクチン接種のため、休業させていただきます。
また、お盆期間中は、水曜の定休日を除き、通常通り営業いたします。
2022年秋冬物の生地も徐々に入り始めています。
お盆明けにはかなり揃うと思われます。

梅雨明け以降、うっとおしい天気が続いていましたが、ようやく本格的な夏がやってきたような気がします。
ただ、新型コロナも第7波に突入し、このコラムを書いています7月下旬現在、日本では世界最大の感染者が発生しているとのこと。
これだけ、マスク着用や手指の消毒など感染予防を行っていながら、このような状況は、理解できないですね。

ところで、1年半ぐらい前の2020年12月にご報告しましたように、店長は、岩手銀行の100%出資会社であるマノルダいわて株式会社のアドバイザーを務めており、微力ながら岩手県の街おこしのお手伝いをしています。

今回、岩手県の特産である「ホームスパン」をご紹介したいと思います。
以前にも、広義のホームスパンである、柔らかい手織り風の生地を旧式のシャトル織機で表現する「日本ホームスパン」の生地をご紹介しましたが、今回は、手紡ぎ・手織りの本格的なホームスパンです。

まず、ホームスパンの成り立ちについて、簡単にご説明します。
明治から大正にかけて、戦争による軍服の需要が高まり、毛織物の自給体制を整えるため、国策として原産国である英国に似た気候の北海道、岩手、長野、福島などで政府がめん羊事業を進めました。
手紡ぎ・手織りのホームスパンの源流はスコットランドやアイルランドですが、明治期後半に岩手県二戸地方にめん羊が導入されたとき、同地に在任していたイギリス人宣教師によって織り方が教えられのが始まりと言われています。
当時は大規模な小岩井農場をはじめとして、農家においてもめん羊飼養が拡大し、農閑期の副業として機織りが定着しました。
その後、めん羊飼養事業そのものはかなり縮小してしまいましたが、岩手においては、大正時代の思想家、柳宗悦氏の「実用と美」の民藝運動に感化された花巻出身の及川全三氏によって農家の副業であったホームスパンの美的価値が見いだされ、工芸品として、また、地場産業として発展しました。
現在、日本におけるホームスパンの生産は8割が岩手県産と言われており、岩手のホームスパンを語るうえで、前述の及川全三氏による工芸品としての地位の確立や、行政の技術的なバックアップは欠かすことができません。
その後、及川氏の一番弟子であった福田ハレ氏はホームスパン作家や講師として活躍、1970年にはその子息の蟻川紘直氏が「蟻川工房」を設立、岩手のホームスパンの中心的存在として、多くの弟子を排出しました。
いま活躍するホームスパン作家のほとんどが、この蟻川工房出身と言われています。
現在、蟻川工房は伊藤聖子氏が引き継ぎ、原毛の段階から最終的な服地の出来上がりまで、一切外注に出すことなく、一人でホームスパンを制作しています。

 
蟻川工房

 
蟻川工房

 
手紡ぎ、ジャケット一着分のために、約9,000mの糸を紡ぎます。
この糸紡ぎには、約20日の期間を要し、最初から最後まで、手の感覚のみで同じ番手で紡ぐ必要があります。

 

 
 
770本の整経と綜絖通しを行ってから、いよいよ製織作業。約2日間をかけてジャケット分、4mを織りあげます。


この作業場では、刈り取った羊毛の洗いに4日間、染色に4日間、綿の解しとごみの選別に2日間かけます。
また、織り上がった服地の縮絨の工程も行われます。

このように、一着の服地を製作するには、まるまる1か月の期間が必要となります。
この工程の中で、多くの時間が糸紡ぎに費やされますが、この手紡ぎ・手織りの技術が「ホームスパン」と呼ばれる理由がわかったような気がします。伊藤氏いわく、洗毛の段階でも丁寧に脂を落としすぎない、人間の呼吸にあったスピードで、ゆっくりと糸を紡ぎ、ゆっくりと織り上げることによって、本来の羊毛の力を最大限に引き出せ、結果として何十年にわたって、軽くて暖かいジャケットがお楽しみいただけるということです。
当店のハンドメードのお仕立をいたしますと、原毛から出来上がりまで、ほとんど機械を使わない素晴らしいジャケットが出来上がります。

先日、その蟻川工房から当店に、伊藤聖子氏製作のジャケット生地が6着届きました。
(いずれも、左が生地全体、右が拡大となっています。

   

 

 

 

 

 

伊藤氏の作るホームスパンは、ジャケットやコートのお仕立てに適した「張り」という実用性と、ゆっくりと紡ぎ、織ることによる適度な伸縮性や充分に空気を含んだふくらみが両立しており、現在の機械紡績や力織機では失われてしまった本来のウールの織物の良さを感じていただけると思います。
工房にて、前述の蟻川工房創業者の故蟻川紘直氏の妻、喜久子さんに見せていただいた、50年以上前に作られたホームスパンのジャケットやコートは、今なお、威厳のある張りを保ち、ホームスパンのすばらしさを実感しました。

もちろん、オリジナルの色柄の生地の特別注文も可能です。その場合、2023年の秋冬のご納品となりますが、ちょうど、蟻川工房の昔からの見本帳も預かっていますので、ご参考にしていただければと思います。

 

 

神戸タータン情報

◇ 先日、浄土真宗本願寺 神戸別院(モダン寺)で開催された、「第108回 仏教文化講座」において、真言宗・浄土真宗の神戸袈裟コレクションが開催され、神戸タータンの輪袈裟も紹介されました。

神戸タータンの輪袈裟も注目されていましたが、両宗派の法衣の歴史的な違いなど、非常に興味深かったです。
最後はランウェイで非常に盛り上がりました。

◇ 神戸北野ホテルでは、「神戸タータンコンセプトルーム」が完成し、予約を開始しました。

 

 

ダイニングにおける「パティオランチ神戸タータン」も非常に話題になっています。
ご予約等、詳細はこちらをご覧ください。>>

(おわり)

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