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Vol. 151 Norfolk Jacket

ようやく冬がやってきましたが、今年は全般的に暖かい冬になりそうです。

今回はツイードのノーフォークジャケットをご紹介したいと思います。

画像のノーフォークジャケットは数年前に制作したものです。
デザインは、ロンドンのVictoria & Albert Museumのアーカイブにある、1890年~1900年に制作されたノーフォークジャケットと、「Men’s Fashion Illustrations from the Turn of the Century」に掲載されているスーツを参考にしました。

 
ロンドンのVictoria & Albert Museumのアーカイブより  
©Victoria & Albert Museum, London, United Kingdom

 

 

「Men’s Fashion Illustrations from the Turn of the Century」より

Victoria & Albert Museum(通称「V&A」)はロンドンのサウスケンジントンにある広大な博物館で、陶磁器、家具、衣装類、ガラス細工、宝石、金属細工、写真、彫刻、織物、絵画など、3000年余りにおよぶ世界文明の遺物が蒐集されています。
ファッションのコーナーもかなり大きなスペースで、14世紀あたりから現在までのレプリカでない本物の服が並んでおり、壮観です。
地元の小学生なども遠足で訪れて、座り込んでスケッチをしていたりで、本当にうらやましい環境ですね。
ちなみに、先ほどのアーカイブはどなたでもネット上で検索することが可能です。
一方、「Men’s Fashion Illustrations from the Turn of the Century」は、アメリカで出版された書籍で、もともと1900年から1910年にかけて発売された「The Sartorial Art Journal」をまとめたものです。
これは、当時のテーラーがアッパーミドルクラスの顧客にデザインを提案する際に使用したデザインブックで、それぞれのTPOに応じたファッションを提案するツールで、ある意味、現在よりサービスが行き届いていますね。

ところで、V&Aの解説によると、ノーフォークジャケットはもともと、1859年から1860年にかけて、志願兵のライフル銃隊が着用していましたが、1860年代に、狩猟の射撃用の服に変遷しました。その後、1870年代には、レジャーやスポーツの服に進化し、1880年代には、アウトドアウェアとして広く行き渡り、サイクリング、フィッシングなどにも着用され、特にゴルフ用にはスパッツやニッカボッカと共にカラフルな装いになったそうです。

これより以前は、いわゆるジャケットと言う概念がなく、フロックコート、モーニングコートのように、着丈の長いものが「上着」でしたが、屋外での動きやすさを考えて着丈の短いジャケットが生まれました。
それを考えると、ジャケットそのものはカジュアルウェアとして「発明」されたものです。
前述の「Men’s Fashion Illustrations from the Turn of the Century」を見ても、1900年前後はアメリカにおいても、アウトドアにおけるスポーツやレジャー用にはほぼ「ジャケット」が普及、インドアのフォーマルウェアはほとんどが「コート」、唯一タキシードのみが「ジャケット」を用いているのがよくわかります。
当時、アメリカのファッションは明らかに英国がお手本となっていますが、英国のファッションは瞬時にアメリカに影響を及ぼしていたのでしょうね。

当店のノーフォークジャケットは、1900年前後のこれらの資料を基にできる限り忠実に再現しました。
前身、後ろ身とも縦のベルトが二本通っており、胸には縦のポケットが左右についています。
腰のベルトには、ボタンが二つ付いており、ウェストサイズが調節できます。
上衿には、スロートフラップが付属しており、三つのボタンで喉を完璧に守ります。
サンプルのW.Billのホームスパンは残念ながら、すでに廃番になっていますが、先月のコラムでご紹介したツイードはどれでも素敵なノーフォークジャケットが作れます。
ツイード各種をご紹介した先月のコラム>>
ノーフォークジャケットはこれ以外にもサンプルがありますので。ぜひご試着ください。

◆ 先日のNEWSでもお知らせしましたように、Men’s EX onlineにて店長を紹介していただきました。


ご笑覧いただけましたら幸いです。>>

 

【神戸タータン情報】
❶ 当店のショーケースがリニューアルしました。
神戸タータンのカーテンとロールスクリーンを配し、様々な服地や服のサンプルと共に、神戸タータングッズを展示しています。
展示に関しては、これから徐々に整備していこうと思っていますのでぜひご覧ください。


❷ いよいよ、12月8日(土)より、東京三鷹の三鷹市美術ギャラリーで、「タータン 伝統と革新のデザイン展」が開催されます。
先日、神戸ファッション美術館で開催され、12000人以上の来場者を迎えた「スコットランドからの贈り物 タータン展」の巡回展示の第一弾です。(そのあと、岩手県立美術館、久留米市立美術館、新潟県立万代島美術館で開催予定です。)
東京の皆さん、三鷹市美術ギャラリーはJR三鷹駅の駅前でアクセス抜群ですので、ぜひお越しください。

タータン 伝統と革新のデザイン展はのHP>>

また、来年の1月6日(日)には、店長がくろすとしゆき氏と対談をさせていただくことになりました。
戦後のメンズファッションの立役者、くろすとしゆき氏にご自身のファッション遍歴やVAN・KENTのものづくりにおけるタータンを語っていただきます。
本来は「対談」なのですが、私は聞きたいことがいっぱいあり、むしろ完全に聞き手になりそうです。
IVY、TRADファン必見です。
詳細は下記のとおりです。

「戦後のメンズファッションとタータン」

【出演】くろすとしゆき(服飾評論家)× 石田原 弘(神戸タータン協議会会長、神戸松蔭女子学院大学非常勤講師)
【日時】2019年 1月 6日(日) 14:00~
【場所】三鷹ネットワーク大学(三鷹市下連雀3-24-3 三鷹駅前協同ビル3階) *展覧会場とは異なります
【参加費】 無料
【定員】 70人
【申込方法】 三鷹市美術ギャラリー(0422-79-0033)へ電話予約(先着順)
*三鷹ネットワーク大学共催
主催:三鷹市美術ギャラリー・公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団

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