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Vol. 209 Responsible Wool Standard

9月になっても、真夏のような暑さが続く今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
また、多くの台風も発生していますのでお気を付けください。

先週の水曜日、第105回全国高校野球選手権記念大会(夏の甲子園)の決勝が行われ、店長の母校である慶應義塾高校が優勝を果たしました。
店長も、当日は、先輩の計らいで甲子園で観戦することができ、この目でしかと優勝を見届けました。
近くに住んでいながら遠かった甲子園、全国優勝をするなんて想像だにしていなかったので、本当にうれしいですね。


優勝の瞬間

ただ、応援がうるさすぎるやら、一瞬にして球場全体を慶應色に染めてしまったやら、一部でいろいろ言われていますが、良し悪しは別にして、まさにこれが慶應の特色といえます。
高校野球では、試合終了後に勝利したチームの栄誉を称え校歌が演奏されますが、慶應義塾高校の場合「塾歌」が流れます。
塾歌は慶應義塾の歌で、塾員(慶應義塾の卒業生)、塾生(慶應義塾の学生、生徒)と教職員など関係者を含めた、いわゆる慶應社中全員のための歌です。
(在校していたころは、高校の校歌もあったと思いますが、今は全く使用されていないようです。)
これは、応援歌の「若き血」と同じく、慶應義塾社中のまさに「共通言語」であり、甲子園は高校だけではなく慶應義塾の闘いだったのでしょう。
慶應義塾高校出身ではない、大学のOBが多数詰めかけたと言われていますが、慶應義塾の卒業生である塾員として慶應義塾の応援に駆け付けたと考えれば腑に落ちますね。
最終的にまさに慶應義塾のホームカミングデーが甲子園で行われたような様相となったわけです。
いずれにせよ、今回の大会では、高校野球そのものや応援の在り方などに一石が投じられたのは間違いなさそうです。

さてさて、当店におきましても、2023年秋冬物のサンプルがほとんど出揃いました。
以前にもお知らせしましたように、昨今の円安とヨーロッパにおけるエネルギーの高騰などから、生地価格がかなり上がっています。
ロロ・ピアーナなどを例にとると、6か月ごとに10%程度の値上げとなり、秋冬物で考えると、1年間で20%程度の値上がり幅になっています。(一部、値下がりをしているものもありますが。)
他のメーカーにおいても、やはり、10%~30%程度の値上げ幅のものが多く、一部、50%近くのものに関しては、本当にマーケティングを理解しているのか疑ってしまいますね。
ただ、その中で、日本に在庫がある生地に関しては、ほとんどのものが旧来の価格が据え置きですので、日本在庫と海外からの取り寄せ品の差がかなり激しくなっています。
輸入品の服地に関しましては如何ともしがたい状況にありますが、当店のお仕立代に関しましては昨年の9月以来、価格は据え置いておりますのでご安心ください。

今シーズンの生地のコレクションを見ていきましょう。
昨年から大きな変化はありませんが、二つ、特筆すべきことがあります。

◆ 一つは、フランネルの充実です。
今までは、Worsted(梳毛)のいわゆる「フランネル風」の軽量のものが主流でしたが、今年は、本格的なWoollen(紡毛)のものが増えています。
重さも400グラム前後のしっかりとしたものが多く、暑い夏の反動でやってくる寒い冬には最適な素材です。

下記はWorstedも含めたその一例です。


Savile Clifford  100% Wool  390g (Woollen)

 


William Halstead “Crown Flannel”  100% Wool  450g (Woollen)

 


Piacenza “Noble Flannel”  90% Wool  10% Cahsmere 290g (Worsted)

 


Drapers “Lady Sanfelice Flannels”  100% Wool  340g (Woollen)

 


Fox Brothers  “Classic Flannel”  100% Wool  370/400g (Woollen)

 


Harrisons  “Worsted & Woollen Flannels”  100% wool  420g (Woollen)

 


Standeven “Oxbridge Flannel”  100% Super 120’s wool  370g (Worsted)

 


Loropiana “Wool & Cashmere Flannels”  95% Wool  5% Cashmere  320g (Worsted)

 

今回はグレーのチョークストライプを集めてみました。
上の二つ(Savle CliffordとWilliam Halstead)は、日本在庫ですので、割安感があります。
但し、在庫は限りがありますので、お早めにご覧ください。

 

◆ 二つ目は環境配慮生地が徐々に増えつつあることです。
今シーズンのLoropiana のカシミアのコレクションは、置き場所に困るぐらいの仰々しいボックスに入っていますが、その中で特筆すべきは「Cashmere Raw」です。


名前の通り、原料や糸を一切染めることなく、ナチュラルからダークブラウンまでの無染色の糸を使って柄を表現しています。
一般的に1mの生地を染めるのに100リットルの水が必要とのことですが、そのような環境配慮もさることながら、染色による風合いの変化がないソフトなタッチが特徴です。
(昨今は、コットンを栽培するための水や、原毛をとるための家畜の飼育に必要な水などによる世界的な水不足も懸念されています。)

 
(左)Cashmere Raw 100% Woollen spun Cahsmere (上段)100% Worsted spun Cashmere (下段)280g
(右)Cashmere Raw 100% Woollen spun Cashmere  300-310g

また、ウールに目を向けると、最近は「R.W.S認証」の生地も増えています。
R.W.SはResponsible Wool Standardの略で、Textile Exchangeという国際的な非営利団体が基準を定めており、 羊毛原料が最終製品に至るまで全ての製造工程において、責任ある管理がなされているかを証明する国際的な認証基準となります。
オーダー服用の服地については、服地の販売までの工程となります。

 


Textile ExchangeのHPより>>

これは、コーヒーなどの「フェアトレード認証」と同様の考え方となります。
ただ、フェアトレードの場合は、農薬の使用制限や土壌の健康、労働環境の整備、適正価格の維持などが主な項目となりますが、羊毛の場合は、それに加えて原毛の供給元となる羊に対する動物愛護なども目的となります。
特に、「ミュールジング」と呼ばれる行為に対する規制も対象となります。
この「ミュールジング」をふくめて、R.W.Sについての詳細は、次回にレポートさせていただきます。
現在展開されているバンチサンプルで、おもなRWS認証生地は下記の通りです。
* Dormeuil  “Millenial”
* Piacenza  “Noble Flannel”
* Loropiana “Cashmere Wish”

お仕立服の服地の場合は、最終的に土に還らない合成繊維の使用は極々わずかで、ウールをはじめとするほとんどの獣毛は生きている動物から採取されるため、環境にやさしい業界といえます。
ただ、昨今、前述の「ミュールジング」やモヘアを採るアンゴラ山羊に対する虐待行為などもレポートされており、SDG’s、トレーサビリティ、サスティナビリティ、動物愛護などの観点から見直しが始まっています。
翻って考えるに、そもそも、日本においても衣類の供給量の約半分しか消費されず、残りは廃棄されている現実に目を向ける必要があると思います。
環境にやさしく、貴重なメードインジャパンのお仕立服にぜひご注目ください(笑)

 

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