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Vol. 207 Morning Dress

昨今の梅雨は、しとしとと雨が降り続くような気候ではなくなってきましたね。
カラッと晴れるかゲリラ豪雨のどちらかで、情緒がなくなってきました。
これも地球の温暖化が原因でしょうか。
私も昨日、車で東京受注会から神戸に戻ったのですが、大台ケ原近辺では、豪雨で見通しが悪く、車の自動運転機能も解除されてしまいました。

ところで、本日、7月1日より、LoropianaとStandevenなどの生地の価格が改訂なります。
最近の更なる円安基調とウクライナ情勢の不透明さによる欧州におけるエネルギーの高騰により、ほとんどの生地が値上がりとなります。
Loropianaにおいては、2023年春夏より10%程度、2022年秋冬に比べ20%程度の値上げとなっています。
また、Standevenなどは生地によっては昨年対比50%近くアップのものもあります。
いずれにせよ多くの生地が8月1日より値上げとなりますので、次の秋冬物でいろいろご計画がありましたら、ぜひお早めにご相談ください。

さて、先日、久しぶりにモーニングドレスを着用する機会に恵まれました。
その前は、25年近く前の父親の葬儀の際だったので、今回、お祝い事で着用できたことはこの上ない喜びです。

モーニングドレスは、モーニングコート、ウェストコート(ベスト)、コールパンツのスリーピースに白シャツ、ネクタイ、ポケットスクエア(ポケットチーフ)のセットによる日中の最上級の正装の一つです。(日本においてモーニングドレスを屋外で着用する機会はほとんどないため、トップハットは必要ないと思います。)

もともと、朝の乗馬の後にそのまま宮廷に上がれるように考えられた実用的な正装で、まさに文字通り、モーニング(朝)に着用されます。
欧米では、式(Ceremony)は日中、宴(Banquet)は必ず夜に行われるため、モーニングドレス=セレモニー用の式服となります。
逆に、夜の正装であるタキシード(ディナージャケット)は宴(パーティー)専用となります。

日本における生活習慣は欧米とは違う点が多く、その意味で「洋服」の正装において、そぐわない点が往々にしてあります。
例えば、なぜか夜に行われる内閣の組閣と天皇陛下による認証式、宮中に上がるために夜でも男性はモーニングを着用します。
式である以上、モーニングドレスが正解なのですが、女性の大臣はパーティーウェアであるイブニングドレスを着用していたりで、ちょっとしたカオスです(笑)

また、日本の婚礼においては式(セレモニー)である結婚式と宴(パーティー)である披露宴が連続して行われるため、モーニングドレスとタキシードの招待客が混然となることがあります。
日本の結婚式の場合、披露宴のお色直しが、式から宴に変わる瞬間なのでしょうね。

さらに時々見かけるのですが、会社の周年行事等で、招待客には平服での出席と記載されているにもかかわらず、主催者はモーニングドレスなどで正装をしていることがあり、これだって、本来なら招待客はクレームをつけるべきですね。
多分、お客様には堅苦しい正装はしなくても良いですよ、という親切心だと思いますが、本来なら、その式や宴の趣旨に基づいたドレスコードに従い、招待する方もされる方も同じ服装で集うことに意義があるではないかとも思います。
これがまさにプロトコル(社交儀礼)ですね。

今回、コールパンツについてはサイズが合わないので、新たに仕立てました。
(モーニングコートも若干オーバーサイズ気味だったのですが、モーニングのサイズ調整はかなり難しいためこのまま着用しました。)


(左)コールパンツ Drapers 100% Wool  260g
(右)ウェストコート(ベスト) 通常のスーツ用の霜降りグレーではなく、単色のグレーサキソニーが必須


(左)モーニングコート 今回着用のものは、25年以上前にロンドンで購入したイタリア製のCanali
(右)当店オリジナルイタリア製シルクタイ

コールパンツは通常のグレーではなく、ブルーグレーのストライプ、ネクタイもほのかにブルー系統でコーディネートしました。
少し彩りが華やかになりました。
また、宴の際は、タキシード等に着替える余裕がなかったので、ミッドナイトブルーのジャケットのみ着替え、ディレクターズスーツにしました。

コロナ禍も明けて、これからどんどんこのような礼服を着用する機会が増えてほしいと思います。

モーニングコートですが、あいにく、ハンドメードの礼服の職人は引退したのですが、逆にマシンメードでは縫製ができるようになりました。
近いうちにサンプルを制作してみるつもりです。

(おわり)

 

 

 

 

 

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