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Oilspun(英国式梳毛紡績:オイルスパン)
「英国式梳毛紡績:オイルスパン」とは
紳士服のスーツ等に使用する梳毛の紡績(糸を紡ぐこと)をする精紡機は、大陸式と英国式に大別されます。
本来、トップの製造工程及び前紡工程(前述のトップを引き延ばしながら徐々に糸を細くしていく工程)や精紡工程(最終的な糸を仕上げる工程)で、原毛のダメージや毛羽の発生を防ぐためには、ある程度のオイルを付与することが必要といわれています。
*トップ = 原毛の夾雑物を取り除き、毛を平行状態に引きそろえた直径3.5㎝程度の糸の前段階のもの。一般的にはスライバー、ウールに関しては特別にトップと呼ばれる。
ただ、大陸式紡績機は高速ゆえ、機械への繊維の巻き付きが懸念されるので少量のオイルの付与しかできません。一方英国式は低速機のため、理想的なオイルの付与が可能です。
世界的には、トップの状態で大陸式で0.7%、英国式で3.5%のオイルの許容量が設定されています。
このトップの状態で取引をされることも多く、その際に大陸式の「ドライトップ」に対して、英国式は「オイルトップ」と呼ばれたこともあり、最終的な糸においても「オイルスパン」と呼ばれるようになったのです。
ただし、我々が強調するオイルスパンの特徴は、このオイルの多さに起因するものではありません。たまに、オイルスパンの説明では、「原毛をオイルに漬け込んだ」みたいな表記がみられますが、これは、完全なる誤りであると同時に、オイルそのものが風合いに影響を及ぼすことはありません。
それはさておき、英国式では、前述のトップの状態を引き延ばしながら徐々に糸を細くしていく(これをドラフトと呼びます。)前紡段階のドローイングボックスなどの工程で、ローラーによるドラフトとフライヤーによる撚りをかける作業を行い、しかも原毛を十分休ませながら何度も行うため、スーツには理想的な、表面に柔らかい手触りを残しながら、弾力性のある糸が出来上がるのです。
この英国式梳毛紡績機の一連の工程において、収束性(毛羽の発生を減らす)、平滑性(撚りが入ったスライバーでも均一なドラフトを可能にする)、柔軟性(毛を柔らかくする)、造摩性(スライバーの強力を増す)を発揮するために、前述のオイルトップが必要とされます。
ちなみに、大陸式梳毛精紡機はスライバーのドラフト工程で、「撚り」をかけないため、柔かい張りの少ない糸になります。
残念ながら、英国式はスピードが遅く、歩留まりが悪いために、クリンプ(ちぢれ)の少ないモヘアなどを除いては、ほとんど稼動していないのが現状ですが、当店のオリジナル生地については、Pure Mohairはもちろんのこと、ウールの糸に関しても特別にこの英国式梳毛精紡機にて、糸を製造しています。
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トップメーキングにおけるバックウォッシャー(再洗機)の工程:繊維の汚れが落とされ、一本一本分離された状態で、大量の油が吹き付けられる。これが、オイルスパンと呼ばれる所以です。
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前紡段階におけるドローイングボックスの工程:上部のローラーで、二本のスライバーが引き延ばされ徐々に細くなっていく。(ダブリング、ドラフト)そして下部のフライヤーで、撚りがかかる。これが、オイルスパンの最大の特徴です。
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右上のドローイングボックスのフライヤー部分:上のフロントローラーから引き込まれた糸は、フライヤーによって撚りがかけられ、中央のボビンに巻き取られる。
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オイルトップの前紡工程:前紡工程においては、トップを何度もドラフト(引き延ばして細くしていく作業)を繰り返し、徐々に細くし糸に近づけていく。
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センテナリーオイルスパンコレクションのグレー生地に使用した、トップ染めのオイルスパンヤーン。
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